新システム:天体撮影軽量機材構築のまとめ
先日から軽量化を目的とした天体撮影機材の再構築を行ってきたが、とりあえず計画どおり完結したので自分の覚えのためにまとめておく。
まずは今回の基本的条件
・光害のある自宅の軒札撮影を楽しむことができる(ナローバンド撮影対応)
・メインカメラをモノクロ冷却カメラとする(フル画素の解像感を得る)
・鏡筒は軽くて、性能やその他の組み合わせ相性の良いものを選ぶ
・赤道儀を含めて機材一式の全体重量をできるだけ軽く抑える
・観望会での眼観や電子観望にも対応できる
・機材セッティングや撮影までを容易に行える
これらの条件をできるだけ満たすために相当情報収集を行ったつもり。
完成した機材一式の状態は次のとおり。
【機材一式の仕様詳細】
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★【主鏡筒】
<タカハシ FC-76DCU>
形式 フローライト アポクロマート 口径 76mm
焦点距離 570mm 口径比 1:7.5
鏡筒径 80mm 鏡筒全長 656mm
質量 1.9kg
対物ユニット側 全長335mm 質量:900g 接眼部ユニット側 全長329mm 質量:830g
ファインダー 6倍30mm 対応鏡筒バンド 80QS
※マルチフラットナー装着時
焦点距離 594mm 口径比 1:7.8
<補正レンズ・アダプター類>
・カメラ回転装置S <KA21200N>
接続規格:M55.9 P=0.75
光路長:12.3mm(M55.9メス奥胴付面から)/ 約20mm(鏡筒側端面から)
質量:110g
・FC/FSマルチフラットナー1.04×<KA00582>
光学系 1群2枚
最大径×全長 60mm×40mm
ネジ規格 鏡筒側:M55.9 P=0.75 メス
マルチCAリング側:M52 P=0.75 オス
質量 110g
・マルチCAリング76<KA18203>
<鏡筒バンド・プレート類>
MORE BLUE 社製
TB002-内径60mm 超軽量化設計鏡筒バンド/本体重量 184g
AU002-VIXEN規格 220自在アリガタ 20mmピッチ穴開タイプ /本体重量 175g
★【赤道儀】
<ZWO AM3> 波動駆動(ストレインウェーブギア)赤道儀
架台モード 赤道儀モード/経緯台モード
駆動系 ストレイン・ウェーブ・ギア(波動歯車装置)+シンクロナスベルト(減速比・300:1)
ピリオディックモーション <±20″(周期:288秒)
赤経駆動 NEMA35ステッピングモーター Model No.14(減速比・100:1)+ブレーキ
赤緯駆動 NEMA35ステッピングモーター Model No.14
搭載重量 8kg(カウンターウェイト未使用時) / 13kg(カウンターウェイト使用時)
本体重量 3.9kg
緯度調整範囲 0°-90°
方位角調整範囲 ±10°
アリミゾ規格 ロスマンディ/ビクセン互換(デュアル式)
BWシャフト取付規格 M12
モーター解像度 0.17秒
最大駆動スピード 秒間6°(対恒星時1440倍速)
駆動速度 対恒星時:0.5×/1×/2×/4×/8×/20×/60×/720×/1440×
外部電源ポート DCプラグ(外径:5.5φ-内径2.1φ)/入力:12V-3A
消費電力 12V-0.386A(スタンバイ時) / 12V-0.58A(恒星時駆動時) / 12V-1.7A(自動導入時)
オートガイド端子 ST4互換(SSAG)
外部インターフェース USB/Wi-Fi
ゼロポジション 機械式
適応温度(使用時) -15゚C〜40゚C
瞬電保護 有り
<TC40 カーボン三脚/専用三脚>
重量2.3kg/耐荷重50kg/折りたたみ時の長さ500mm/展開時高さ470mm〜800mm/段数2
<延長ピラー:AM5・軽量用ハーフピラー PE160>
高さ 160mm /直径 124mm/重量 1kg/85mm径アタッチメント方式
※搭載可能重量13kgまで用のハーフピラーです。(安定性上、10Kg程度までを推奨)
★【統合制御】
<ASIAIR Plus>
電源:入力DC12V/出力:DC12V×4(1系統最大3A。4系統合計で最大6Aまで)
本体重量:131g
★【ガイドシステム】
●鏡筒:Asker FMA135 /口径30mm/焦点距離135mm/口径比F4.5/フラットナー内臓6枚レンズ構成(うち一枚EDレンズ)/鏡筒長113mm/バックフォーカス55mm/重量約370g(本体約280g、台座約90g)
●ガイドカメラ:ZWO ASI678MC
CMOSセンサー Sony 1/1.8 "CMOS IMX678
解像度 3840×2160 : 829M Pixel
ピクセルサイズ 2.0×2.0ミクロン
露出時間 32μ秒〜2000秒
ゼロ・アンプグロー 対応
QE(量子効率) 83%@450nm
飽和電荷容量 11.27Ke
フランジバック 17.5mm(6.5mm)
シャッター ローリングシャッター
保護フィルター ARコーティングフィルター
対応OS Windows7,8,10 32&64/Mac OSX/Linux
インターフェース USB3.0
ビットレート 12bit出力(12bitADC)
接続規格 31.7mm/T2(M42mmP=0.75mm)/50.8(※差し込みしろが短いため非推奨)
サイズ 最大外径62mm/全長35.5mm(※31.7ノーズピースを含まず)
重量 126g
動作可能温度 -5゚C〜50゚C
保管温度 -10゚C〜60゚C
動作可能湿度 0%〜80%
最大転送レート 47.5fps
ROI 可能(※ROI=Region of Interest:撮影領域の選択)
オートガイド対応 可能(SSAG・ST-4互換)
★【撮像カメラ】
<カメラ:ZWO ASI533MM Pro>
センサー Sony IMX533 1"CMOS
解像度 3008×3008 (904M Pixel)
ピクセルサイズ 3.76×3.76ミクロン
A/Dコンバータ 14bit
露出時間 32μ秒〜2,000秒
ゼロ・アンプグロー 対応
撮影領域の選択 可能
オートガイドポート 無し
フランジバック 17.5mm
接続規格 USB3.0 Type-B
冷却機能 二段ペルチェ冷却 / 外気温より40〜45℃
電源 12V 最大3A
大きさ 最大外径78mm
質量 約410g(本体)
<ZWO 電動フィルターホイール EFW-7×36II>
対応フィルター φ36mmフィルター
フィルター取付数 最大7枚
光路長 20mm
本体ネジ 両側M42P0.75メス
PCとの接続端子 USB2.0 Type-B
質量 約400g
<ZWO LRGB フィルターセット φ36mm>
枠なしタイプ
<ZWO ナローバンド(7nm)φ36mmフィルター(Hα/SII/OIII)>
枠なしタイプ
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鏡筒や撮像カメラ&ガイドカメラ系は、組み合わせにより様々な写野に対応できるように選択した。過去にはワイドレンジに重きを置いた構成を使用していたが、そこそこ飽きたので、中レンジ〜長焦点イメージに対応できる組み合わせができる構成をとった。
そのため、Asker FMA135というガイド鏡筒は135mm(F3.5)という短焦点ながら光学性能的には優れたものを選定。ガイドカメラ(ASI 678MC/800万画素程度)も超小型のチップサイズながらもアンプグローのない高仕様なCMOSカラーカメラを採用することで、電子観望向けの中レンジに使用でき、FC-76に装着すれば、フルサイズ比較の写野で約5倍となる焦点3000mm相当の長焦点レベルの対象にも対応できるものとした。
さて、余談だが、実は気に入っているものがある。
今回、鏡筒専用タカハシバッグをスターベース東京さんから調達したのだが、FC-76DCUのおすすめサイズよりワンサイズ大きいMサイズとした。これがドンぴしゃだった!
カメラも外す必要のない・・いい感じに収まってくれたので、セッティングや撤収も素早くできそう。こういう細かいことが嬉しい。
これらのシステム一式・・・鏡筒、撮像カメラ、ガイドシステム等含め赤道儀に乗せる機材一式の重量は4.3kg程度。
赤道儀(ZWO AM3)はカーボン三脚や延長ピラー含め7.2kg程度。
合計は12kg未満でまとめることができた。赤道儀の脚を持てば一式まとめて軽々運べる重量だ。
とはいえ、ポータブルバッテリーが10kg近くあるので、機材合計は22kgとなった。
EM200 Tennma2 赤道儀やFSQ-85EDおよび発電機を使用していた以前使用していたころに比べれば、一式1/3程度の重量で収まったことにはなるが、大きな要因には、赤道儀が搭載重量8kgまでならウェイトレスで運用できることも寄与している。
またポータブルバッテリーの容量(最低10時間稼働)にもかかわる消費電力も、夜露対策ヒーター2本、カメラ冷却も含めて計算どおりの範囲内で落ち着いてくれている。(以下の写真は恒星時追尾状態、天体導入時は赤道儀に12Wほどプラスされる)
カメラ冷却ON&恒星追尾の定格レベルで28Whの出力のこの感じだと、14時間くらいは全然持ちそうだ。